今回は、加古川市平岡町にある、東播磨地域唯一の大学、兵庫大学からのレポートです。
兵庫大学では「人間力」と「応用力」を備えた専門職業人の養成を目指し、地域に根ざした大学として、学生が地域の方々と出会い、共に考え、共に学び、共に成長し合える大学として、様々な教育活動が行われています。
中でも、健康科学部栄養マネジメント学科では、豊かな人間性を礎とし、管理栄養士をはじめとした「食」と「健康」のスペシャリストの養成を行い、医療施設、福祉施設、学校、企業といったさまざまな職域で、栄養のプロフェッショナルとして活躍できる人材育成に取り組まれています。
今回、取材させていただくのは栄養マネジメント学科3回生の「公衆栄養学実習(A)」の授業です。こちらでは「食」と「健康」のスペシャリストを目指す学生さんが国家資格である「管理栄養士」を目指して、日々勉学に励んでいます。
3つの視点で理解を深める、ロールプレイング
今回の実習は、公民館で開催する「若い世代に向けた栄養教室」という設定。参加者(地域住民)、講師、専門職としての管理栄養士という3つの視点から、ロールプレイング形式で行います。
メニューは『東はりま発ヘルシーメニュー』で紹介されている中から、グループごとに自由に選びました。「ビーフ巻き巻きカツ」や「豆腐グラタン」など2品ずつ、レシピ通りの分量と作り方で調理します。
栄養教室の講師は、参加者に「食」と「健康」に関心をもっていただけるよう、事前準備や会場準備から後片付けも含めたスムーズな教室運営が求められます。参加者は、食や健康への関心の程度も様々な地域住民の方が想定されるため、専門職として対象者に合わせた指導の知識や技術が求められます。


3回生ともなると、調理はお手のもの。兵庫大学では、「管理栄養士は栄養学の知識をもって人の代謝を考え、食事としての提供を考えられる実践力」を持つ専門職の育成に取り組まれているため、学内での実習だけではなく、自宅でのお弁当づくりや夕食作りも推奨し、実践している学生さんが多いそうです。
日頃の学内での実習に加え、すし屋やパン屋などの飲食関係のアルバイトでも、調理技術が磨かれているようです。






取材ということで、皆さん少し緊張している様子でしたが、時間が経つにつれて、いつも通りの笑顔が見られました。
管理栄養士を志したきっかけは「母と料理をした楽しい記憶」「自分の食物アレルギーの経験」「健康の大切さを、食べることを通して具体的に楽しく伝えたい」など、十人十色です。






他のグループが作ったものも試食。数に限りがあるのでじゃんけんによる争奪戦です。
試食は真剣そのもの。管理栄養士の視点で、レシピの分量や作り方の記載のわかりやすさ、味付けや盛りつけなど、様々な観点から気がついたことを、わいわい話し合いながらの試食です。


試食を終え、最後は専門職としての管理栄養士の立場から、レシピや作り方の記載、教室運営の方法などについて振り返りを行います。
「同じレシピで記載分量どおり作ったのに、出来上がり量が違って見えるものがあった。原因は食材の切り方の大きさが違うから。」「作り方の説明の時に、切り方や大きさも詳しく説明した方が初心者にはわかりやすい。」「もう少し工夫するともっと美味しくなりそう。」
「野菜たっぷり」「うす味でも美味しい」「大豆製品がたっぷり」「地産地消」など『東はりま発ヘルシーメニュー』で掲げられた要件を満たせているか、満たせていない場合はどうすればよいかの検証も行いました。「もう少し、野菜の量を増やしても気にならないかも。」など、様々な改善案が提案されました。
管理栄養士の仕事の現場
テーブルを見回りながら、学生の様子を入念にチェックされるのは、この実習を担当する嶋津先生と宇野先生。「実際の現場では、調理は初めてといった人や、食器の洗い方を知らない人もいるかもしれませんね。常に対象者(参加者)目線でものを考えて、対応できるようにしておきましょうね。」
使用する会場によっては、調味料や食器の枚数などの使用申請が必要な場合があります。会場の下見はもちろん、使用申請のなかった調理器具や調味料は、先生に没収されてしまいます。
「慣れてくると、ちょっとしたトラブルが起こっても何とかなってしまうのですが、実習では事前準備の大切さも学んで欲しいので、あえて厳しくしています。」と嶋津先生は苦笑い。
管理栄養士は食の専門家として、災害時の食事支援現場では、ライフラインがストップした中で、使える調理器具を用意し、限られた食材、時間、人員で安全・安心な食を提供することをプロデュースする役割も期待されます。
「状況のわからない現場でも、臨機応変に適切に対応し、人に寄り添える管理栄養士になって欲しいと思います。」
学生への指導助言とともに、安全に配慮した気配りなど、先生方の指導の姿を見て、学生さんたちもまた、専門職としての学びを深めているようでした。
キャンパスを飛び出して、地域を知り、地域で学ぶ
最近では大学と地域がさまざまな形で連携し、地域の課題解決の学びを深めているそうです。「実践食育研究センター」を中心に、学生による生産農家への取材や、幼稚園児対象の親子クッキング、高齢者向け配食弁当のレシピ作成と試作など、地域を対象とした実践活動を通して、学生は応用力とコミュニケーション能力を身につけていくようです。
(あとがき)
卒業後に目指す進路をインタビューしたところ、「食品メーカーで商品開発を手がけたい」「病院で食を通じて人の健康を守る仕事がしたい」「ドラッグストアで地域医療に携わりたい」「高齢者や障害者の福祉施設で、栄養ケアマネジメントに取り組みたい」「学校や児童福祉施設で栄養教諭として食育に取り組みたい」など、具体的な将来像を聞かせてくれた学生さんがたくさんいました。
管理栄養士は、食を通じて人の暮らしに寄り添い、乳幼児から高齢世代まで幅広い人を対象にした仕事のフィールドがあることを感じました。まさに十人十色の「管理栄養士」を目指して、未来にはばたいてくださいね。